バレエをはじめ、様々なダンス、舞台芸術において「演技をすること」は必要不可欠。どんなに素晴らしい身体に恵まれていても、それに伴う演技力、表現力を持ち合わせていなければ、逆に残念な評価を受けてしまうかもしれません。

『演技』は誰にでも必要な能力

舞台に立って何かしらの役を演じる職に就いていなければ、必要ないのではないか？と思う「演技力」。でも言ってみれば、その「演技をトレーニングする」際にも、誰かがその方法を教えてくれる訳じゃなくて、自分が編み出したものを誰かに評価してもらうことで、徐々に成長させていくという「元々、自分の内で育てるもの」なのです。

日常生活の中で「演技をする」と聞くと、まるで噓の自分を表に出して、その場を取り繕うかのような「悪いこと」のイメージがあるかもしれません。

けれども僕の感覚からすると、どストレートに素の自分。つまり全く作っていない自分をさらけ出せる相手なんて、本当に限られているはずなので、人と人とのコミュニケーションの中の大部分は「演技している」という状態になるのではないかと思います。

せっかく自分を「演じている」のですから、それを上手に表現できる方がいいですよね♪

想像する力は 実経験のみならず

「年の功」もありまして、当たり前ですが若い頃よりも今の方が、自分の演技力は高くなっております。

若い頃に初めて挑戦した役柄で「命を投げ出すほど誰かを愛する」とか「最愛の人の死を目の当たりにする」などをはじめ、様々な「現実に味わったことのない感覚」ばかりでしたから、どれもこれも頭の中や、心の中で想像で作り上げて、表現してみることに苦労してきました。

…でもこれってよく考えてみると、本を読んだり、映画を見たりして、誰しもが「想像力を広げる」「心を育てる」ということを、成長してきた中で自然に身に付けてきたものではないでしょうか？

だから「演技」とは、その場限りの嘘の自分を出すことではなく「まだ経験したことのない素晴らしい感情や感覚」を追い求めて、それを現実のものにしようとするための力。想像力のことを示していると思います。

「現実」と「想像」はバランスよく

残念ながら「現実に目を向ける」ことと「想像を広げる」ということは対称的な関係にあるのは、みんな分かっていることだと思います。

現代の暮らしは「情報社会」がメインなので、人々はふっと沸いて出る疑問はすぐにネットで答えを探してしまうし、感覚的に癖になってしまったのか、自分の想いや考えより、他者の反応や言動を頼りにしてしまうことが大きくなっているような気がします。

すぐに目の前にある現実がリアル。と感じてしまうと、想像力や感情を作る余地が無くなってしまいます。

なかなか簡単なことではありませんが、ときに目を閉じて、自分の心とよく相談してみて。本当の自分は何を求めているのか？何をしたいのか？を想像してみる時間を作ってみるといいですね。

バレエやピラティスのレッスンでも、技術にこだわっていては「踊り」は育ちませんから、是非「感情的になって動く」ことを練習してみて下さいね。